「LRT」勉強会の結果報告
文責:田村利明
はじめに
 車依存社会への反省から、一度は廃止した路面電車を新世紀の都市交通の切り札として復活させた、欧米の公共交通政策に学ぶところは多い。
 今、町が抱える交通問題は、将来の公共交通のあり方を視野に入れて考える必要があるのではないでしょうか。
 地方分権、規制緩和という社会の動向の中で、川島町住民として公共交通政策に参画する必要性と、また、その責任もあると思うのです。
 
 川島町の人口は現在約23400人。少子高齢化はこの町も例外ではありません。
また、人口の約四分の一が農家世帯という町では現在、過疎化という深刻な農業問題も抱えているのです。
 軌道系の公共交通機関のない川島町にとって、バス便のみに頼らざるを得ない現状は今後の町の将来像を描く上で非常に心もとないものとしか言えません。川島に鉄道を誘致しようという声は、これまでに数え切れないくらいありました。過去はどうあれ、町の現状を分析し、軌道系の公共交通機関の導入の可能性を探ってみる事なくしては何も進展しません。『川島にLRT(ライトレールトランジット )なんて荒唐無稽な話だ。』という声も
耳にします。しかし、何もせずにいては何も始まりません。まずは知ってみる事です。

川島の公共交通の現状(東武バス便のみ)
平日 休日 最終バス
@川越 〜 鴻巣
  (新荒子行きも含む)
23本 17本 21:01
A川越 〜 桶川
  (山ヶ谷行きも含む)
28本 24本 23:25
B川越 〜 東松山
  (八幡団地行きも含む)
40本 31本 23:36(深夜バス)
C若葉 〜 八幡団地 32本 28本 21:35
 
川島町が直面する交通アクセスの諸問題
 ●バス便の数が少ない。
 ●終バスが早い。(昨年、川越発八幡団地行きの深夜バスが平日に一便新設された。)
 ●交通渋滞によって、バスの定時運行が難しい。
 ●従ってマイカーやタクシーを利用せざるを得ない。
路線 距離
高崎線 上尾 10Km
北上尾 8.6Km
桶川 7.8Km
北本 7.5Km
鴻巣 9.0Km
東武東上線 川越 8.0Km
鶴ヶ島 7.2Km
若葉 7.5Km
坂戸 8.5Km
北坂戸 7.7Km
高坂 8.0Km
東松山 9.5Km
 
路面電車(LRT)ルネサンス
■1880年代から欧米先進都市で運行を始め、公共交通の主役となった路面電車は、第二次世界大戦の終結とともにほとんどの都市で廃止された。理由はひとつ、自動車社会の到来である。車と道路を共用する
  路面電車はじゃまもの扱いされ主役の座から下ろされたのである。

■しかし、1970年代になると、廃止の急先鋒であったアメリカ大陸では、自動車なしでは暮らせなくなった社会に、渋滞などの問題が生じる中で、公共交通の見直しが始まり、路面電車にはLRT(ライトレールトランジット )と名づけられた。そして、実際に形となって現れるのは、1981年に開業した、カナダ中西部の街、カルガリーと、
  南カリフォルニアのサンディエゴである。
  これが起点となって、路面電車の建設ブームが全世界に広がりそのうねりは21世紀に入り加速している。

■一方、日本は欧米に比べて、マイカーの普及が遅く、路面電車は元気だった。しかし、1960年代の高度成長期になると、車に押される形で多くの都市から路面電車が消えた。1960年から1990年までの30年間に事業者数で6割、路線長にして約8割減少している。大都市では路面電車は地下鉄にバトンタッチされ、1970年代になると中規模の都市においても地下鉄が計画され多くの線路が剥されていった。

路面電車がもとめられている理由
■非効率な自動車交通
 混雑問題の発生。道路供給政策はむしろ自動車の急速な増加を促した。
 自動車は「外部不経済」。道路混雑から環境汚染。普通乗用車はバスの15倍の占有面積。
 環境効率の悪化 諸外国では自動車の低公害化と並行して、軌道系の公共交通へシフトしてきたのに対して、日本では欧米とは逆に、公共交通から自動車へのシフトが進んでいる。

■LRT 路面電車がもたらす6つの便益
  連結運転でバスより大きい輸送力
  簡単乗り降り、バリアフリー
  5分に1本、「待たずに乗れる」 
  乗り変えなしで、郊外と市街地直結 
  安い建設コスト
  楽しく便利に生まれ変わる市街地

期待される点
●21世紀の“まち”にふさわしい都市交通システムとなりえる。
●車依存都市からの転換の契機となる。
●パーク&ライド、カーシェアリングとの併用の可能性。
●持続可能な交通。<環境面 経済.財政面 社会面>
 町づくり、町の活性化のための装置として
 LRTがその役割を担える。

課 題
■財源、採算性の問題。 欧米では公共交通を公共的に支援。 一方、日本では独立採算制。
 財政的に持続可能な公共交通をめざさなければならない。

■LRTの普及に立ちふさがる日本の「軌道法」 の壁。 最高速度40キロ、最大車両延長30メートル

■地方分権化、規制緩和の新しい流れの中で、公共交通の問題が国(建設省)から自治体のレベルに移行せざるを得ない。
■利用する地域住民として公共交通問題の政策に参加する責任があると思うし、住民がその役割を今後ますます担ってゆくだろうと思う。

参考文献 『路面電車』ルネッサンス   宇都宮 浄人 著 
       『新しい交通町づくりの思想』  太田 勝敏 編著